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大阪都構想の批判と対案

中山徹さん(自治体問題研究所理事長)
(1月27日の緊急学習会の講演を主催者がまとめたものです。)

1.都構想のスケジュール

 今年1月13日、特別区設置協議会で、大阪市を解体して特別区を設置するという協定書が決まった。決まったのは、昨年暮れに公明党が賛成に転じたから。創価学会が(住民投票で)自主投票にするというニュースが流れていた。公明党がどうするのかはわからないが。

 このままいくと、3月の府議会、市議会で協定書が承認される状況にある。議会で承認されると5月の住民投票に移っていく。住民投票をするのは大阪市の有権者。もし投票数の過半数で可決されれば、大阪市が廃止されて、特別区が設置されることになる。議会では公明党が賛成に回ったので可決されるだろうが、住民投票の結果で大阪市が消滅するかもしれないという重大な事態になっている。



「1.都構想のスケジュール」(2分24秒)  (ページトップ)


2.都構想とは何か

 大阪都、大阪都といっているが、正式には「都」になるとは決まっていない。いまのままでいくと、大阪府のまま。なぜ法律上は「都」に変わらないかというと、石原前東京都知事が「都は天皇陛下のいるところだ。なぜ大阪が都になるのか」と言っていたから。これに対して、橋下市長が言っていたのは「都というのは都(みやこ)ではなく、大都市の都だ」。ここではややこしいので、大阪都という言い方でいきたい。

 都構想というのは、大阪市を廃止して、五つの特別区を設置すること。そして、大阪市のおこなってきた業務、学校・保育所・病院など大阪市が所有している資産、大阪市の職員は、一部は大阪都に移管し、大半は新しく設置する五つの特別区に割り振られる。

協定書は全部で600頁あるが、最初の50頁ほどが文章で、残りは一覧表になっていて、大阪市のどの業務、資産を大阪府に移し、どれを特別区に移すのか、を決めたもの。それを実施するか、しないかの住民投票が議論になっている。

 目標としているのは東京23区だが、今回の5特別区と東京23区を比べると、人口も少なく、国際競争に勝っていけないので、近隣の堺、東大阪、吹田なども特別区に編入して、将来は19程度の特別区にしたいと橋下市長が言っている。それで大体東京23区と同じくらいの人口規模になる。だから今回はスタートだと言っている。次には、徐々に特別区を増やしていこうとしている。

 →「2.都構想とは何か」(5分42秒)動画はコチラ
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3.都構想の目的

 都構想の最大の目的は、大阪を世界の中で闘える街に変えたいということ。それが今できていないのは、権限と予算が大阪府と大阪市に分かれているからだと言い、大阪が生き残っていくためには、経済対策、大型公共事業、規制緩和などの思い切った施策をやれるように、権限と財源を大阪都一箇所に集中させたいというのが都構想の目的である。

 では具体的に、大阪が国際競争に勝ち残れるように、どういうことを計画しているかと言うと、まずカジノである。「どうしてカジノで大阪が勝ち残れるのか」と聞かれると、私も困ってしまうが、大阪に人が来なくなっているから、もっと裕福なアジアの富裕層を集めてくるためにはカジノを作らなければならないと維新は主張している。

 あとは、30年先と言われているリニア(新幹線)の大阪延伸をもっと早めたい、リニアの新大阪駅と関西新空港の間を直線的に短時間で結べる(地下鉄)なにわ筋線を早く作りたい、高速道路が少ない(私はそうは思わないが)ので、特に淀川左岸線を早く作って、関空から湾岸線→淀川左岸線→第二京阪で京都まで一直線に行けるような高速道路網を整備したいと言っている。

 そういうことをもっと一気に進めたい、そのために権限と財源を大阪都に集中させたい、これが大阪都構想の最大の狙いである。それだけではなく、この間維新が進めてきた規制緩和をもっと進めたいということもある。大阪は、戦略特区に指定されているが、その中で検討されていることは、医療の公的制度を民間ベースに変えていく、新しく立地する企業の法人市民税を免除する、雇用規制を大幅に緩和するなどで、大阪をもっともビジネスしやすい環境に変えていくことである。教育でも、徹底した競争型の教育に変えていく。これらを徹底してやっていくことも都構想の目的である。

→「3.都構想の目的」(6分13秒)動画はコチラ
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4.都構想で大阪経済は活性化するのか

 果たしてカジノで大阪経済は活性化するのか?カジノは何かを生産するわけでもなく、何の価値も作り出さない。単にお金を移動させるだけ。カジノの想定されている利用者エリアは、西は姫路、北は滋賀県、南は和歌山まで広く設定されているが、その圏内では確実に経済が衰退する。なぜかというと、カジノで使う金の分だけ、地元で使うお金が減ってしまうから。カジノ経済効果の一つとして言われているのは、雇用される従業員が使うお金であるが、従業員の通勤圏は利用者エリアよりもかなり狭い、カジノで賭けられたお金よりも従業員の賃金は絶対に少ないことから、経済効果はさほどでない。

 それでも経済効果を上げようとすれば、海外から富裕層を大量に引き寄せて、どんどんお金を使ってもらうしかない。しかし、いまアジアはカジノだらけで、大阪に富裕層を呼び込めるという可能性は少ない。また、カジノやテーマパークに来た客は、その中だけで過ごすのが普通で、外でお金を使うことはまずないから、カジノに来たついでに大阪を観光で回ってお金を使ってくれるのも無理だ。マカオのカジノでは、中国から来る客の半分は日帰りで、商店街でお金を使うことはない。したがって、カジノを作って大阪経済が活性化することはあり得ない。

 規制緩和も同じで、労働規制を緩和すれば、ますます不安定雇用が増え、賃金が下がって、大阪経済は衰退してしまう。つまり都構想を推進すれば、大阪経済にとってはマイナスでしかない。

→「4.都構想で大阪経済は活性化するのか」(8分35秒)動画はコチラ
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5.都構想でもたらされること

 都構想の最大の問題点は、それによって市民サービスが大幅に低下してしまうこと。これまで、維新は市民サービスを軒並み削減してきた。これを、都構想が実現したからといって、急に心を入れ替えるとは思えない。

 大阪都構想をすすめる理由として、維新は大阪府と大阪市の二重行政をなくすことを挙げてきた。当初、維新は大阪市をなくして大阪都にすれば無駄がなくなり、4000億円の財源が生まれる、その財源を使って大型公共事業やカジノの誘致がやれると言っていた。

 ところが、それが全くの嘘だということが分かってきた。実際に計算してみると、900億円しかないことがわかってきた。しかも、二重行政のリストに載っている一番大きなものは地下鉄で、これは全く二重ではない。大阪府営地下鉄はどこにもない。地下鉄を民間に売り払うことで財源を生み出すだけ。次に大きいのは市バスだが、これも二重ではない。大阪府営バスは走っていない。これも市バスを民間に売り渡すことで財源を生み出すだけである。

 水道を見ると、二重と思えるかもしれない。確かに府と市の両方に浄水場がある。しかし、水道管には府も市もないので、全然二重ではない。強いて言えば、大阪府立大学と大阪市立大学があるが、大阪市民は2つ大学があっても二重だとは思っていない。大阪のような大きな都市には2つくらい公立大学があっても誰も困っていない。図書館も、府立と市立があっても誰も困っていない。したがって、二重行政の解消で市民に迷惑をかけずに財源が出てきて、それで大型公共事業ができるというのは全くのデタラメだったと分かってきた。

 しかし、カジノを臨海部に作ると、そこまでお客を運ぶ鉄道を造るなどお金がかかるが、二重行政の解消では財源が確保できない。そうすると、大阪市の財源を大阪都に吸い上げることで財源を作るしかない。大阪市の財源は5つの特別区に全部割り振られるのではなく、大阪都が上前をはねるのである。

 大阪都が財源を確保する方法は二つある。一つは、大阪市の税収を大阪府に移すこと。つまり、大阪市の税収をそのまま5つの特別区に配分するのではなく、大阪府に上前をはねられてから配分される。今までの大阪市の市民向け予算は減らされる。そうしなければ、大型公共事業の財源は確保できない。都構想のどさくさにまぎれておこなわれると、市民にはわからない。もう一つは、市民の財産を切り売りすること。地下鉄を売ってしまう、市バスを売ってしまう、住吉病院をやめてしまうなど、市民が作りあげてきた財産を売り払ってしまうことで財源を作ろうとしている。したがって、大阪都ができることで住民サービスが向上することはあり得ない。

 介護保険や国民健康保険はいままで大阪市がやってきたが、大阪都ができたあとは、大阪都も特別区もやらない。一部事務組合を作ってそこがやることになっている。大阪市がやっていれば、問題があれば大阪市に文句を言える。しかし、膨大な数の一部事務組合が作られるが、一部事務組合には市民の声は全く反映されない。特別区になれば、より身近なところで住民サービスができると言っているが全く嘘で、国保や介護保険などは全く住民と切り離されたところでやられる。

→「5.都構想でもたらされること」(13分8秒)動画はコチラ
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6.なぜ今回の住民投票に反対か

 私は、住民投票一般には反対ではない。住民投票は市民が意思を表明する場として重要。むしろ積極的に推進する立場にある。しかし、今回の住民投票には反対。

 この住民投票に反対しているのは、一つには議会がきちんとした態度を示していないから。その地域を代表しているのは、知事・市長、議会、市民の三者だが、今回の協定書について大阪市議会はきちんとした判断を下していない。公明党は、内容には反対だが、議会では賛成すると言っている。市民の住民投票で決めたいというのが理由だが、これはおかしい。市長、議会、市民がそれぞれどういう判断をするのかが重要であるのに、議会が判断していないのが大きな問題である。

 もう一つは、今回の住民投票は大阪市をなくすという重要なことなのに、圧倒的多数の市民が「ようわからん」と言っていること。市民は判断しかねているのに、急いで5月に住民投票をしなければならないのか。もっと議論を尽くすべき。

 三つ目は、今回の住民投票に制度的な欠陥があるということ。条例で行われる住民投票の場合、過半数の投票がなければ住民投票が成立しないと決めたりしている。しかし、今回はいくら投票率が低くても、投票総数の過半数で決まることになっている。これは明らかに制度的な欠陥である。

→「6.なぜ今回の住民投票に反対か」(4分50秒)動画はコチラ
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7.大阪経済の活性化をどう進めるか

 大阪経済が厳しいのは間違いない。でも、大阪市と大阪府が存在しているから大阪経済が厳しいのか。そんなことはない。東京と同じように大阪都にしたら東京と同じように経済拡大するのか、そんなこともない。では今後、大阪で何を重視しなければいけないのか。

 いま経済で一番厳しいのは、賃金が全然上がらない、中小企業がなんぼ働いても儲からない、雇用がどんどん不安定になっていること。

 たとえば、20代前半の正規雇用は、20年前には8割を超えていたが、いまは50%ちょっと。30代男性で結婚できるかどうかは、正規雇用かどうかにかかっている。30代男性で正規雇用の人は6割が結婚しているが、不安定雇用の人は2割しか結婚していない。不安定雇用の増大を解決しないことには、いくらカジノを誘致しても大阪経済は活性化しない。

 大阪経済にとって重要なのは、雇用がどんどん不安定になっている、賃金が全然上がらない、中小企業がなんぼ働いても儲からないということにメスを入れていくことだ。そこを避けている限り、大阪経済の活性化はあり得ない。大阪府や大阪市が持っている権限を使って、賃金上昇、不安定雇用の改善、中小企業の収益拡大にとりくむことが決定的に重要。

 自治体でできることは限られているが、できることはある。たとえば、条例を作ることができる、ブラック企業規制条例を作って、若者の相談窓口を作り、企業名を公表することはできる。大阪府や大阪市が公共事業を発注する際に、同じような値段なら正規雇用率が高い企業、障害者の雇用率が高い企業、下請け企業に配慮している企業に発注する。そうすることで、大企業が独り占めしている利益を中小企業に回していくことができる。

 日本にお金がないということではない。日本は世界第3位の経済大国で、莫大な富を蓄積している。しかし、その富が庶民や若者、中小企業に回っていない、一部の富裕層や大手企業だけが富を独占している。自治体の持っている権限をフルに使って、ここにメスを入れる施策を展開できるかどうかが大阪経済にとって一番重要。そのような自治体を増やしていくことで国も変わっていく。

→「7.大阪経済の活性化をどう進めるか」(6分43秒)動画はコチラ
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8.運動の進め方

 住民投票はいわば小選挙区で、賛成、反対のどちらが多数になるかだ。ここで多数になるには、堺市長選でみられたように、地域にたくさんいる、保守だけれども大阪のことをまじめに考えている人々と革新的な人がつながっていけるかどうかが大きなポイントになる。地域でいろんな団体の役員をやったりしている人々が大阪市解体にもっとも怒っている。大阪市がなくなるかどうかという大きな問題で、こうした連携がとれるかどうかが重要だ。

 もう一つのポイントは、共同ができるところでは進めればいいが、そうでないところでは反対する人が自分たちの判断でどんどん運動を進めていくこと。賛成の側は、司令塔からの指示で一斉に運動していけるが、反対の側はそうはいかないので、どこからかの指令を待つのではなく、自前で運動していく、そして時々は反対派が集まって大きな集会を開いていくことも必要。集会を開く際に、意見の違いを言っても仕方がないので、大阪市の解体に反対するという一点でまとまる。

 三つ目には、反対の人を増やすとともに、反対の人に投票所に足を運んでもらうところまで働きかけること。

 最後に、このままだと「ようわからん」ままに投票日を迎えた人が投票に行かない事態となり、投票率が下がって賛成が過半数になる恐れがある。投票日を統一地方選とずらしたのは、反対の議席の方が多いので、議員に投票するついでに反対に投票する人がでてくるのを防ぐため。重要なのは、「ようわからん」まま投票日を迎える人たちへの働きかけだ。その際には「わからんのやったら、とりあえず投票で反対して、大阪市解体を一度ストップしよう。ストップしてから、1年、2年かけてゆっくりと考えたらええ。大阪市がなくなったら元には戻らへんのやから」と働きかければよい。

 いまのままでは、住民投票で賛成の方が多いと思う。しかし、通ってしまったら大阪市が消滅してしまう。そんなことを許していいのか。

 今日のように50分もかけて説明するのでは聞いてもらえない、1行でわかってもらうキャッチフレーズを打ち出す必要がある。私は、大阪市民がいなくなる、大阪市民だったのが湾岸区民などに勝手に変えられてしまう、こんなことを許していいのかな、と考えている。皆さんの方で、分かりやすい打ち出しを考えていただきたい。


→「8.運動の進め方」(11分47秒)動画はコチラ
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